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東京地方裁判所 昭和33年(日)1803号 決定 1958年5月20日

申立人 鈴木義平

主文

本件配当要求の申立を却下する。

理由

民事訴訟法が強制執行の目的物たる財産の換価金につきいわゆる平等配分主義をとり、債務名義を有しない債権者にも配当要求を許しながら、各種の財産につき配当要求をし得ることをある時期までに限定している(民事訴訟法第五九二条、第六二〇条第一項、第六四六条第二項参照)のは、なるべく多くの債権者に配当に予らせると同時に、配当手続を迅速に完了することによつて債権の満足をなるべく速かに実現させようと期しているに外ならないものと解せられる。而して債権に対する強制執行の場合につき民事訴訟法第六二〇条第一項は右配当要求をし得る時期を差押債権者が取立をしその旨を執行裁判所に届出るまで、又は執行吏が売得金を領収するまでとしているが、同法第六二一条により金銭債権につき配当要求を受けた第三債務者が債務額を供託した場合には同条第三項により裁判所にその事情を届出るべく、裁判所は同法第六二七条により右事情届書に基き七日の期間内に同条所定の計算書を差出すべき旨各債権者に催告すべく、次に同法第六二八条により右七日の期間満了後配当表を作るべきこととなつているところ、この場合にもし差押債権者が債権を取立て執行裁判所へ届出るまで配当要求を許すとすれば、右取立乃至執行裁判所への届出が前記七日の期間経過後にされることがあるべく、その場合には右六二八条により一旦配当表が作成された後更に配当要求の都度配当表の作成を余儀なくされる結果、強制執行の完結が著しく遅滞し、民事訴訟法が前記のように配当要求をし得る時期を限定している趣意に反することとなるべく、同法が配当要求し得る時期を有体動産の売得金については競売期日の終に至るまでとし(第五九二条)、不動産の売得金については競落期日の終に至るまでとし(第六四六条第二項)、いずれも配当表の作成に先立たしめており、尚債権に対する強制執行の通常の場合に於ても配当要求し得る時期が配当表作成前の建前となつているのに、ひとり金銭債権に対する強制執行に於て第三債務者が同法第六百二十一条により債務額を供託した場合に限り配当表作成後に配当要求をすることを許しているものとは到底解し難く、前記の平等配分主義をとりながら配当要求をし得る時期を限定している民事訴訟法の法意に照らし、右第三債務者が債務額を供託した場合に配当要求をし得る時期は明文の規定は存しないけれども配当表を作成すべき時期の直前即ち同法第六二七条所定の七日の期間が満了するまでと解するのを相当としなければならない。大審院昭和十七年(ク)第二七号昭和二十年一月十八日決定〔大審判例集第二四巻第一号第一頁〕は以上当裁判所の採るところと見解を異にし、民事訴訟法第六二〇条第一項により差押債権者が供託金を受領する時まで配当要求し得る旨判示しているけれども、大審院昭和八年(オ)第二六三三号昭和九年四月七日判決〔大審院判例集第一三巻第七号第五一九頁〕では民事訴訟法第六四六条第二項が配当手続の渋滞を防止する法意に出たものであつて競落期日終了後はたとい配当実施前でも優先権のない普通債権者の配当要求が許されない旨判示されてあり、この判示に照らしても、前記の大審院決定の説くところを正しいものとすることができない。

記録によれば、本件債権に対する強制執行において第三債務者が昭和三十三年三月二十八日に債務額を供託し、当裁判所にその事情届出をし、当裁判所は同年五月二日附を以て差押債権者及び各配当要求債権者に対し催告書到達の日から七日以内に民事訴訟法第六二七条所定の計算書を差し出すべき旨の催告を発し、右催告書が少くも同年五月六日までに差押債権者及び配当要求申出をした各債権者に送達されたことを認め得るから、右供託金に対する配当要求も右五月六日から七日の期間満了の時までにされることを要するところ本件配当要求申立は同年五月十九日当裁判所に受け付けられたことが記録上明らかであるから、右申立は前記七日の期間満了後にされたものであつて、許すべからざるものであることが明らかである。よつて主文の通り決定した。

(裁判官 高井常太郎)

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